お米や野菜は金沢みやげになるか
株式会社松本では、メーカー様、飲食店様の商品開発のお手伝いをさせていただいております。
~松本社長の商品開発ストーリー~
シリーズ7回目は、日本一のコシヒカリです。
客観的にご飯の美味しさを計るにはどうしたらよいか?
機械が味を測定する「食味計」があります。測る値は、白米の場合、「 アミロース 」 と 「 たんぱく質 」 「 水分 」 の3項目が一般的な指標となっています。
でも機械を使わなくても冷めたご飯を食べれは、すぐに分かります。炊きたてはどんなお米でもある程度美味しく感じますが、劣化がすぐに始まります。良い米は冷めても美味しいのです。
米どころ加賀百万石の肥沃な大地、霊峰白山から流れくる清らかな水の恵みを受けて、じっくりと育てた日本一のコシヒカリが農家自身の手で、どんな商品に変化したのか、お読みください。
なにげない朝食の風景 : ご飯からおにぎりせんべいに
「 朝ごはん持っていきなさい 」
「 はーい 」
毎朝、毎朝、ばあちゃんは孫娘達のための朝ごはん作りです。
しかも朝の化粧で忙しい彼女達のために持ち歩きできるライスバーカー風の朝ごはんです。
今日も今日とて 「 朝ごはん持っていきなさい! 熱々だよ~ 」
毎日の日常の風景です。
変化の金沢で農家に求められるイノベーションは
さて、いま金沢は新幹線開業のおかげで一躍注目エリアです。
開通の2週間前からテレビのキー局は毎日必ず金沢特集でした。
そのなかでも特筆は 「 秘密のケンミンSHOW 」 で 「 金沢おでん 」 「 とり野菜みそ 」 と、2回も特集が組まれ、その結果放送後1日で1トン分が売れて金沢中からとり野菜味噌が消えたとか・・・。
1月の特集の金沢おでんに使う車麩は、半年たったいまでも製造が追いつかない状態が続いています。 ( 7月末の追加情報です )
その金沢を訪れた観光客のほとんどは、食が目当てで 「 海鮮丼 」 「 金沢おでん 」 「 金沢カレー 」 の黄金の三角地帯に出没するようです。
多くの観光客が訪れるのは金沢駅、近江町市場、東山の茶屋街、21世紀美術館。これががテッパンコースです。そしてお土産を買って帰るのは、金沢駅の物販エリア ・ あんとが定番です。
さて、いまを去ること二年前、、佛田 ( ぶった ) さん夫婦が私の店を訪ねていただきました。佛田さんは、金沢の近郊にある農家です。しかしこの農家ただものではありません。
全国で1番最初に設立した農業法人の株式会社化であり、「 有機質肥料99%で育てたこしひかり 」 は炊けばすべての米粒が立って、甘くて美味しくて天皇杯を受賞したほどの優れものです。
コメや野菜加工品の生産・販売を手掛け、いま流行の六次産業化の動きを20年前から手がけ、社長の 佛田利弘 氏はインターネットの黎明期からネットの可能性を看破し仕事に取り入れてきました。
また日本中から 「 土の力 」 を重視した新しい農業を学びに研修生が引きもきらず訪れ、日本のみならず世界中に農業指導に出かけるなど、その視点は世界レベルのつわもの ( 益荒男 )です。
私とは1998年から知り合い公私に渡り面倒を見てもらっています。佛田さんには教えてもらうばっかりでお返しする事は何もできていませんでした。そんな私に絶好の機会が訪れたのです。
大規模小売店舗での農家のポジションは
「 松本さん、こんど金沢駅に店を出すことになったんだ 」
「 素晴らしい! 近江町市場か茶屋街、金沢駅以外、物販で勝負出来ないですからね 」
「 さすがJR。 佛田さんを選ぶなんて眼の付け所がシャープですネ 」
「 で、何を売るんですか?」
「 そうなんだよね。観光客に重たい米は売れないよね~ 」
「 そうですね、いくら美味しくても、お土産の絶対条件は軽くてかさばるものですから 」
「 実はうちで売っている漬物を乗せて握り寿しにしょうかナ~と ・・・ 」
「 物販でなく、漬物すしの持ち帰りですか? 」
「 色々考えたんだけど、コンサルの先生から提案されたのもあってサ・・・ 」
「 で、私にに相談するところをみると、イマイチ引っかかっているわけですネ 」
「 そうなんだ! どう思う? 」
「 シャリは外注するんでしょう? ライバルは多くて、原価は高いし、ロスが多くて失敗しますね 」
「 やっぱり、そう思う? 」
「 じゃ~、なに売ればいいと思う? 」
「 お弁当は、一人1個。お土産は平均で一人三個。やるなら物販でしょう。 」
「 だからナニ? うちにしか出来ない。うち特有のことだよ! 」
「 いまから考えます。来週にでも来てください 」
「 期待してるよ 」
「 恩返しをさせてもらいますよ 」
「 またオーバーな 」
「 冬にはまだ早いですよ。あはは 」
2人は安心したように帰っていきました。さて、
「 佛田さんの強みを生かすにはどうするか・・・・ 」
「 新幹線開業までに仕上げなければ・・・・ 」
農家の何を売るか? コンセプトから店作りへ
< これだ~!! >
まずは食べてください。
田舎の農家のおばあちゃんが可愛い孫娘のために作る 「 おにぎりセンベイ 」 です。
孫娘は学校に行くのに遅刻ギリギリの時間に家を出るため朝ごはんを食べる時間がありません。
孫娘の体を心配したおばあちゃんは、炊き立てのご飯にネギと青のりと海老を入れ、おにぎりにして、押し潰して秘伝の味付けをしてトースターで焼き上げます。
これが毎日食べても飽きない、ご飯のツブツブが残っているおにぎりせんべいです。
バス停まで歩いていても食べれる「パリパリ」と
学校の休み時間にも「パリパリ」と
友達も私にも食べさせてと「パリパリ」と
これを最高級品の「有機質肥料99%で育てたこしひかり」を使って、
もちろん玄米を使って加工するときに精米するこだわり。
絶対にくず米は使わない。センベイ屋さんの非常識を狙うのです。
そして香り付けの青のりと北陸で水揚げされた甘海老をたっぷり中に入れて作りましょう。
これぞ美味しさの秘密です。
ありそうでなかった組み合わせ。
北陸の米といったらこしひかり
北陸の魚といえば甘海老
どちらも本物。まがい物なし
コンセプトは、いつも孫娘のために作っている「甘海老せんべい」を遠来のお客様におすそわけ。
これならば浅草でなく金沢で佛田さんのセンベイを買う理由があるでしょう。
安くて軽くてボリュームたっぷりでお土産にピッタリです。
店の内装は、ちょっと田舎ぽいほうがいいかしら。秋には実る稲穂をディスプレイしたり。
しかもですね、半生の商品とロングライフ商品との組み合わせで、店内でも焼き上げて香ばしい香りが立ち上がればお客様が寄ってきて、店内調理でシズル感いっぱい。百貨店の祭事でも使えます。
これが売れないわけがない。
おばあちゃんの愛情が一杯詰まった「甘海老せんべい」
すでにベースを作ってもらう工場には話をしてあります。
後はまかせてネ。お米の販売から甘海老せんべいに変えるワ
「 いいわ~。いい! 美味しい! 」
「 わたし、これに金沢のキャラクター・ひゃくまんさんのイラストをパッケージにつけて売るわ~。 デザインは私に任せてね 」 と、佛田さんの奥さん。
「 それと名前は、ひゃくまんさん煎餅にするワ。これ決定ね! 」
奥さんは、現役のアナウンサー。商売柄、感性はピカイチです。
とまあ、主導権はぶった奥さんに移って試作が始まったのです。
そして半年の準備期間があり、2014年7月17日に新幹線開業に先駆けてのあんと の開店を迎えたのです。
まだまだ佛田さん夫婦の挑戦は続きます。
2~3年後には英国や北欧で直営店を出す予定と聞いています。
去年の5月から英ロンドンの日本食スーパー向けに、コシヒカリの輸出を始め、スウェーデンなど北欧三国にはすでに足がかりを確保してあります。
「 欧州は魚介類、塩など食の好みが日本と似ている 」 と肌で感じているようで、金沢駅での直営店の経験を欧州でも生かしていくのは間違いないでしょう。