食材の旅・隠岐のばい貝

松本社長の食材の旅 隠岐の島のバイ貝編

隠岐の島は金沢の食糧庫のひとつです

株式会社松本では、生産者や収穫者と直接コミュニケーションをとり、安心・安全で質の高い食材の確保を行っております。

~ 松本社長の食材の旅 ~

シリーズの5回目は、島根県・隠岐の ばい貝 の物語です。

 秋の風が吹き始めた頃から金沢の近江町市場の立ち食いおでん屋さんには多くの観光客が詰め掛けています。

金沢おでんは大人気

金沢おでんは大人気

新幹線開業の一年前から東京のキー局を中心に金沢の特集を組むようになり、そのなかで「金沢おでん」の特集が庶民的であり、かつその具材も金沢特有のネタを使うということで、珍しくもあり、全国的な注目を集めています。この店は新幹線開業の半年前からオープンをした店なのです。しかも入居しているビルが来年には立て替えるということで期間限定の開店なのです。

さすがに夏場は苦戦をしていましたが、春がやってくるまでは大賑わいとなるでしょう。

金沢おでんとバイ貝

 その金沢おでんに欠かせないものの一つに 「バイ貝 (白バイ貝) 」があります。

 刺身にも出来る大き目のバイ貝を茹でて掃除をしてから (この刺身用の大きさが金沢おでんのポイントなのです)、おでん鍋の底が見える位の透明なあっさりとした、それでいて繊細で濃厚な出しつゆで素材本来の味を楽しめるようにして、お客様にお出しするのが金沢流なのです。

プリッとした歯ごたえの身と濃厚な肝はクセになるおいしさです。また、このバイ貝からも濃厚な出汁が出ることで金沢おでんは一層おいしくなるのです。

西郷漁協さんから差し入れをいただきました

西郷漁協さんから差し入れをいただきました

 さてこのバイ貝、金沢近海であがるものは 「加賀バイ」、富山湾で取れるものを 「越中バイ」と呼ばれていますが、近年では対馬海流の暖流と日本海流の寒流が流れ、その2つの海流がぶつかり合う遠く離れた島根県の隠岐の島からも、その水揚げのすべてが金沢に送られてきます。

富山以西の日本海側ではどこでも採れているバイ貝ですが、なぜか他の産地からの入荷はなく、隠岐の島産だけ限定で金沢に送られてくるのです。それは隠岐の島が漁獲量が多いということではありません。秘密は、その品質にありました。

かご漁のバイ貝採り

ばい貝船入稿

 日本海の沖、隠岐の島の豊かな海で育った新鮮なバイ貝達は、複数の船団で年間を通じて 「ばいかご漁」 と呼ばれる、ロープに付けたかごに餌を入れて海底に沈めて、おびきよせて中に入ったところを漁獲する手法で漁獲されています。

他産地のバイ貝と比較して、日持ちがよく、甘みが強い品質が加賀料理の食材として十分に通用するレベルの素材なのです。

 上記のようにバイ貝は金沢では、おでん種として、あるいは刺身として大きなものが珍重されます。関東など東日本では逆に、あまり刺身としては食べられず、炊いて前菜や煮物などに使うため小振りのものの方が高く、大型のものや小さいものはセリ値が安いのです。

すべての船では殺菌海水が使われている

すべての船では殺菌海水が使われている

年間を通してあまり味が変わりませんが、貝殻は薄くもろいため、割れたカラが異物として嫌われるため東京では人気がないと思われます。
しかしその身もワタも大きく歩留まりがよく、特に貝類には珍しくワタには苦みがなく、おいしい貝なのです。

10月18日からの今回の旅では、金沢中央市場の荷受のウロコ水産の副社長 川邉俊彦 氏と近江町市場の魚屋の面々とともに隠岐の島の西郷港を訪れ、その実態に迫ります。

さあ、箱詰めが始まります

さあ、箱詰めが始まります

西郷港では殺菌海水を自ら製造しています

西郷港では殺菌海水を自ら製造しています

隠岐の島のバイ貝は、金沢仕様に合わせた漁業

西郷港の漁業協同組合 JFしまね 販売課長・齋藤 敬 氏と面談をして色々とお話を伺いました。

・週に、二回五隻の船で資源保護のための自主規制をしながらその上限が一回 5K入りで1000箱だけの限定のカゴ網漁をしています

社長みずから先頭に立ってバイ貝を選別します

社長みずから先頭に立ってバイ貝を選別します

・五隻の船はそれぞれが漁をするの範囲が決まって競業することはありません。

・それらはすべて金沢だけに送っています。

・1000箱のバイ貝は、一旦境港に送られそこからトラック便で金沢に送られる

・資源確保だけではなく、経費面でもトラックの積載量の面からも一回1000箱の漁と決めている。

・カニの解禁を迎えると四隻の船はカニ漁に周り、一隻だけがバイ貝漁を行なう。

選別作業が顧客指示の源です

選別作業が顧客指示の源です

 ・それが冬になるとセリ値の上がる原因である。

・その船がマルヤマで、これが一番セリ値の出る船であり、若手が多い船です。

・すべての船が殺菌水を使い、衛生面に気を使っている。

・セリ値の高い船は手間と経費をかけ選別や、鮮度の落ちない工夫をしている。

★ 手間を掛ければ掛けるだけ、美味しくなる事が、ここでも証明されjました。

・かご漁の餌は、経費節減のためサバや鰯が使われていますが、単価の安いニシンを使うかどうか検討中でしたが、意見を求められ金沢側から

殺菌海水に付けたスポンジが秘密の一つです。

下に敷くスポンジ、たっぷりの氷も鮮度保持の秘密

 「それは困る!」

「集魚方法の餌としてニシンはよく集まるのは分かりますが、煮物にすると臭い匂いがするで使わないで欲しい」

「それは年を召したお客様からよく聞く話です」 との金沢からの要望を伝えました。

齋藤 敬 氏からは 「聞いてよかったです。実はもうニシンの見積もりも、サンプルももらって実証実験をするだけになっていたのです。」

「やはりお客様と直接に接している人たちと話さなければいけないですよね。」と我々とのタックに前向きな意見をいただきました。
その他にも、

・一本釣りの目鯛などの水揚げがあるが、扱いが雑

・その修正があれば金沢で引きは取る

・バイ貝を運ぶトラックの隙間に入れてくれば運送費が安くなり、お互いにメリットがあるのでは・・・・

その後、宿に入り何やかやと雑談が始まりましたが、結論としては

船の乗組員が全員で選別に取り掛かります

船の乗組員が全員で選別に取り掛かります

 手間をかけるだけの工賃分が、セリ値で出れば、すべての船がそうするのだろうが、目に見えての費用対効果がすぐに上がらないだろうから、実現するまでには時間がかかるだろう。

 それはそれで仕方がないことだが、一船だけの問題ではないという事を自覚しなければならない。
そして乗組員の人手不足や高齢化の波に逆らい、若手を育て、夢のある漁業者にするためには、産地全体でイメージアップや質のアップ、ブランド化に取り組まなければならない。

我々としても産地をそだて、消費者に良いものを提供するには、産地と漁業者とタックを組んで取り組まなければならない。との結論に落ち着きました。