農林水産省の調査によると、2021年度の食品ロス量は523万トン。事業系食品ロス(主に規格外品、返品、売れ残り、食べ残しなど)は279万トンで前年より約4万トン増加しています。
その内訳を見てみると、外食産業が80万トンと約3割を占めています。
今こそ対応を見直す時
お客様から「料理が余ったので持ち帰りたい」と相談を受けた際、これまでは食品衛生上の観点から多くの飲食店が「申し訳ございませんが、お持ち帰りはできません」と断るケースが一般的でした。
しかし近年、持ち帰り文化の普及や食品ロス削減への関心が高まる中で、この対応ではお客様のニーズに応えられない場面も増えてきています。
これを受け、厚生労働省は10月16日に食べ残しを衛生的に持ち帰るためのガイドライン骨子案を公表しました。
このガイドラインを理解し、適切な持ち帰り方法を提供することは、食品衛生リスクを抑えながら店舗の信頼性とお客様満足度の向上につながりますので検討をお願いします。
持ち帰りは「自己責任」が前提
大事なのは、原則として「その場で食べきる」ことが基本であり、持ち帰りは食べきれない場合の補助的手段として位置づけられています。また、持ち帰り後の食品管理はお客様自身の責任において行うものとされています。
なお、ガイドラインの対象となるのは、一般的なレストランやホテルのビュッフェ形式の宴会・パーティなどです。一方、テイクアウトを主とする店舗や学校・病院などの集団給食施設は対象外となっています。
衛生管理のポイント
提供可能な料理の制限
刺身や生肉、生卵を使用した料理など、持ち帰りに適さない食品は提供対象外とする。
包装方法の工夫
専用の清潔な容器を用意し、汁物は漏れないよう適切に密閉する。
明確な注意表示
ここがポイントです。
お客様に持ち帰り後の適切な保管方法を簡潔に伝えるなどの工夫や、アレルギー情報の記載や再加熱の必要性、方法についてもアドバイスしましょう。
例:「持ち帰り後は2時間以内に冷蔵庫へ」「再加熱してお召し上がりください」。
責任範囲の明確化
お客様自身での保存方法や摂取について、飲食店が責任を負わないことを明示しましょう。
事前に清潔な容器を準備し、料理ごとに持ち帰り可否の基準を設定することが必要です。
パッケージには「保存方法」と「摂取期限」を記載することでトラブルを防ぎ、安心して利用してもらえる環境を整えましょう。
スムーズな対応のためのステップ
スタッフへの教育
ガイドラインをチームで共有し、持ち帰り可能な料理や衛生管理基準を徹底します。
持ち帰り対応の準備
専用容器やラベルを調達し、実際の運用に適した体制を整えます。
お客様への案内
メニューや店内掲示物、スタッフの説明を通じて、持ち帰りのルールや注意点を周知します。
食品ロス削減と顧客満足度の向上は、店舗の魅力を高める大きなチャンスです。
新しいガイドラインを活用し、時代のニーズに応える柔軟な対応を進めていきましょう。
『しゃぶ葉』の食べ残しを減らす「こまめどりプロジェクト」
しゃぶしゃぶ食べ放題のチェーン店「しゃぶ葉」は、2024年4月から食品ロス削減を目的とした「こまめどりプロジェクト」を全店舗で開始しました。すべての飲食店に当てはまるものではなく、ごく一部の業態の飲食店むけですが、飲食店が食品ロス削減のためにできることについてあくまでも解決策の一例としてご紹介します。
プロジェクトの概要
食べ終わった後のきれいなテーブルを撮影し、会計時にスタッフへ写真を提示すると、次回使える110円のドリンクバー券がもらえます。
通常299円のドリンクバーが110円で利用できる特典となります。
特徴的なアプローチ
① 他の食べ放題店が「食べ残しにペナルティ」を課すのに対し、しゃぶ葉は「きれいに食べ切った人に特典」を与えるポジティブな方法を採用。
② 食べきれる量を少しずつこまめに取ることを促進。
③ 現在の利用率は全利用客の約3-4%
すかいらーくグループの環境目標
短期:年平均1%以上の改善
中期:2030年までに2018年比50%削減
長期:2050年までに2018年比75%削減
その他の取り組み
・2020年から「もったいないパック」による持ち帰りサービスを提供
・デジタルメニューに「お持ち帰り容器」ボタンを設置
このプロジェクトは、食品ロスの削減と顧客満足度の向上を同時に実現する革新的な取り組みとして注目されています。