農家プロジェクトは、石川県内の農家と当社が深くつながり、そして農家と当社のお客様をつなごうというものです。
こんにちは。「未来を見つめる農家プロジェクト」の推進役を任されている、インターン生・金沢学院大学3年の谷口稀保(たにぐち きほ)です。
~ 農家プロジェクト:人を幸せにできる仕事は農業!~
シリーズの 9回目は、「日本一小さい専業農家」風来さんです。
こんにちは!
今回私が、初めてヒアリングさせていただいたのは、石川県白山市能美市にある 旬の漬物・無農薬野菜をお客様に直接販売する「風来」の西田栄喜さんです。
西田さんは、通称源さんと呼ばれています。
大学時代の落語部の時の名前を、親しみやすさや、美味しさ、安全さのキャラ建てとして、使用しているそうです。
私の初めてのヒアリングということで、社長は、友達の農家の中から緊張しなくても大丈夫な人、リラックスして、話ができそうな人を選んでくださったのですが、私、とても緊張していました…。本当に。
■ 人として、自分の生きる道は農業です
西田さんは農業をする前、県外で、バーテンや、ホテル業をしていたらしいのですが、石川に戻ってきたときに、サービス業がしたかったらしいのです。
しかし、石川で、しかも人口10万人の白山市で、飲食をしても、なかなか人は来てくれないだろうと考え、西田さんのお母さんが、漬物をしていたのをきっかけに、それなら、とことんいい野菜にこだわった漬物を作ろう、と始めたのがきっかけだそうです。
そして、お客様からは、無農薬の野菜のセットの販売を求められたので、今は、50種類もの、野菜を育てているのです。
一時期70種類にもなったらしいのですが、一般の方は、食について、保守的だから種類を絞ったそうです。
保守的というのは、変わった野菜があったときに食べ方がわからない、どう使うのかがわからなくて手を出しづらい。ということです。それなら、スーパーに置かれている野菜と比べてもらって、どっちがおいしいのかを知ってもらいたいと思ったそうです。
西田さんが、経営している風来は、自他ともに認める、日本一小さな農家さんです。
農家というのは、30a以上の農地がないと国から農家と認められないらしいのです。
そんな土地で、売り上げがなんと、1200万円を超えているのです。
*1アールは1辺が10m(1damデカメートル)の正方形の面積で100平方メートル(m2)(=約1畝) 。30aなら約300坪。アールの100倍は1ヘクタール(ha)。
驚きですよね。すごいと思います。
でも一般の人には何が凄いか分からないと思いますので、私が説明しますね。
農林水産省の「農業経営統計調査」によると、
専業農家の平均年収はたったの200万円、兼業農家も含め日本の農家の平均耕地面積は2.27ha(ヘクタール)だそうです。そして専業農家で食べていく場合は、稲作農家で20ha以上、畑作農家で3ha以上必要だと書かれています。
という事は、3ha以上必要だといわれているのに、その1/10の畑作面積で平均年収の何倍も稼いでいるわけです。
凄いです。
なんと本まで出してベストセラーになっているんです。
この本の中で、化学物質過敏症のお客さんから、
「西田さんの野菜を初めて食べることができました」と、涙ながらに感謝されたのがきっかけで人生の価値観が変わったと言われています。
命を育む食べものを育てる農業こそ、人を幸せにできる仕事!
それこそが自分のめざす道!
そう確信できたころから経営が軌道に乗るようになったと書かれています。
■ お客さんとの距離感が秘密
その成功している理由は、やっぱり、お客さんとの距離にあると思います。
私が、訪問した時に、お客さんが来たのですが、その方は小さな子を抱っこしていました。
そしてお客さんが、「子供と一緒に育てられる、苗ってどれですか。」って聞いたときに、
「それなら、キュウリ、トマト、ピーマンがありまして…」と、優しく対応していました。
また、お客さんが聞いていないのに、「土はありますか?」と、西田さんは聞かれるのです。
土って重たいですよね。
西田さんは、「運びますよ」って言って、車まで、運んでいたんです。
距離が近い農家だからこそ、できること、感じてもらえるところがあるのですよね。
■ その距離感をネット通販に持ち込んだ
日本一小さな専業農家という事なので、どれくらい小さいのかなと考えながら、西田さんの農場に向かいましたが、私からしたら広い!
だって30aって300坪ですよ。私の自宅がいくつ入るのか!
広い、普通に広いです!
でもこの土地の広さが、農家さんの最小規模なんですね。
このお店は、製造加工販売まで、しています。野菜のセットのネット通販の販売がメインですが、そのほかにも、キムチや、漬物などの加工品を取り扱っています。
つまり生産(1次)、加工(2次)、販売(3次)をすべて手掛ける6次産業化を実現している農家さんなのです。奥さんは、畑の作業はしませんが、野菜を使ったシフォンケーキなどを作っているそうです。
■ 西田さんのこだわり
無農薬栽培で大変なことは、虫、雑草と言われました。
西田さんの畑は、無農薬だからこそ、周りには、雑草がたくさん生えていました。
虫の対策は何をしているのか?と、聞くと
肥料を使わないことだそうです。
虫は、肥料をあげると、増えるそうなんです。
よく無農薬野菜で、虫に食べられているのはおいしい野菜だからで、虫は窒素など、悪いものを食べてくれる。とよく言われています。
しかし、西田さんは、
「いい土、バランスのいい土には、最終的に、虫は寄ってはこない。」といいます。
そこの域に達するまでがなかなか大変だそうです。
私たちが、虫がついているのは、おいしい証拠と思ってきた背景には、そこの域に達していない人や、バランスのいい土には虫が寄ってこないことを知らない人ばかりだったからかもしれないですね。
無農薬だと、直売で売って高い値段をつけたくても、結局は、安い方をお客さんが買っていく。
つまり安いというのは、一番訴求力がある。とおっしゃっていました。
そうですね。私も安い方を手に取ってしまいますね…
でも、安いだけでは、経費とか利益とか、手間ひまかかった時間に伴わなかったりするんですよね。
こういう農家さんの現状というのは、やはり直接聞いて、心で感じることってものすごく大切なんだなと思いました。
貴重なお話を聞けました。
西田さんありがとうございました。
■ 社長からひと言
西田さんと話していると人間の本当の幸せって何なんだろうと考えさせられます。
極端な話、ほとんどの日本人は毎日毎日あくせくと働いて人間関係に悩み、そのおかげで家庭の中までトラブルを持ち込んで、すさんでいく家庭。そして誰からも感謝されず、自分の代わりはすぐに埋められ、得られるのは物。という価値観だけ。
一方、SNSを使ってお客様と顔が見える人間関係を構築しつつ、人には感謝され、子ども3人を含む家族5人が幸せに稼げ、家族と地域の人が明るく自然の法則に従って生きる生活。
西田さんとは、ネット通販を通じて初めて知り合い2000年以来の19年の付き合いになりますが、彼のひょうひょうとした人生観を、生き方をうらやましく思っています。
西田さんの収入はほとんどがネット通販からですが、彼は言います。
「自然と一緒になって生きるっていいですよ。売上っていったって月50万あれば素敵に生きていけます。」
「松本さん、その何十倍必要ですか?」
「その中で多くの物をなくしていませんか?」
生きていくにはお金は確かに必要ですが、
何のために働くのかといえば、彼は「幸せのためだ」と断言します。
そして“お金”という価値観ではなく、“命”の価値観でモノゴトを見ることの大切さを教えてくれるのです。
でも、若い女の子のインタビューの時ぐらいひげを剃れよ。(笑い)
あなたらしいけどね。