金沢城の正門である大手門の前にある尾張町は商人の街で今でも多くの老舗が立ち並んでいます。その片隅にはその商家のだんな衆が芸者遊びに繰り込む秘密の通路である 「暗がり坂」 があります。
「日常の生活」 から、神社の木に囲まれた狭いうす暗らい坂を、一気に降りていくとやはり狭い裏通りに出ます。そこは金沢三茶屋街のひとつ 主計(かずえ)町です。
雪が少しでも積もれば歩くのもままならない狭い道の突き当りを折れて浅野川沿いにでるとそこは「非日常の世界」。小雨のしっとりとした濡れた風情が良く似合う茶屋街の表通りです。その中の一番はずれにあるのが 「御料理・貴船」 です。
きのこ狩りに見立てた前菜の盛り込み
手前と奥を合わせて三人前です。
いま一番予約が取れない店と言われている貴船さんの繁盛の秘密がここにあります。前菜とか刺身を季節に合わせた器、趣向にて盛り込みにしています。
街中にいると気温の変化しか季節感が感じられず、また部屋の中では冷暖房が完備されまったく時節を感じることが出来ませんが、ここにくれば昔の原体験で持っている日本人の記憶がよみがえるわけです。
貴船のオーナーシェフ中川さんの横に写っている釜でお客さんの召し上がるスピードに合わせて季節の炊き込みご飯を炊き上げます。
ここも人気のひとつになっています。
しかし一番の秘密は、彼が自分の仕事に文字通り命を賭けていることです。
朝食のある土曜日の夜は未明の2時、3時までの仕込み、4時起床で朝食の準備、朝食が終わればずっと仕込みをしながら出前の弁当、昼の営業、夜の営業、すべて終わるのが日付が変ってから。
医者から緊急手術と2週間の入院を告げられても、仕方がないからと手術はしても、抜糸もしないで翌日には強制退院して仕事をする男です。
献立替りには睡眠時間2時間もない日が何日も続きます。休みの水曜日でさえ店に泊り込み、食器替えや料理の試作で1日を過ごしています。
「男はやらなければいけない時がある!」
「今やらなければいつやるんですか!」
「決めたことですから!」
「太く短く!」 中川語録のひとつです。
いまのゆとり世代の若者に聞かせてやりたい言葉ですが、 「そんなに太くなくてもいいのでは」 と、本人には言うのですが、彼の美学が許さないのでしょう。
せめてタバコくらいは止めて自分の体に気を使って欲しい。と思うのは私の妻からの伝言です。
御料理 貴船
〒920-0901
電話:076-220-6131 [mappress mapid=”16″]