金沢の観光といえば、少し昔(自分の大学生くらいの頃)ならば、
「兼六園」 (日本三大名園のひとつ) ・ 「尾山神社」 (加賀藩・藩祖 前田利家を祭る) だけで、コアな人にとって 「武家屋敷群」 (武家の古い町並み) が加わるくらいで、はやばやと能登や加賀の温泉へ流れていく男性客主体の団体旅行が主でした。
いま金沢の人気観光スポットというと 「21世紀美術館」 「近江町市場」 「ひがし茶屋街」 となっています。その変化に時代による日本人の旅に対する求めているものの変化を感じますね。
ハイシーズンといえばやはり夏で、雪の振る冬には、誰もいないという閑散たる風景と閑古鳥がなく悲惨な現状でしたが、ここ十年以上は暖冬で雪も少なく、長靴ではなく靴でこれるため観光客が増えています。
冬の金沢を訪れる2つの理由それは 「極上グルメ」 と 「極上の雪景色」
人気のAKBにあやかって 「金沢へAKB (甘えび、蟹、ぶり) を食べに行こう」 と、こんな贅沢な季節は冬しか無い!とばかり期待をいっぱいに胸に抱いて来ていただいています。
金沢でフードビジネスにかかわる私たちは、お客様すべてを一度きりと考えずに、金沢を宣伝してくれる無料の営業マンととらえ彼らの期待に応え 「また来たい」 と思ってもらえるよう努力しないといけないですね。
さて前出の 「ひがし茶屋街」 の石畳の道の両側には、江戸時代の雰囲気を残す昔ながらの古い町屋の紅殻格子 (金沢ではキムスコ 「木虫籠」 と呼ばれています) のお茶屋が並んでおり、一種独特の雰囲気を醸し出し、観光客があこがれる町並みを作っています。
そんなひがしの茶屋街を奥の方に進んでいくと、中ほど過ぎたぐらいのところに150年以上の歴史あるお茶屋を利用した金沢の名店・日本料理銭屋の姉妹店 「十月亭」 があります。
格子戸から差し込む陽の光りがとてもまぶしく、またカウンターから見る中庭に差し込む光がとても柔らかです。最近は伝統的な日本家屋もめっきり少なくなって、こういう光の陰影を見なくなってきているので、新鮮な光景と感じてしまいます。
昼間の茶屋街は多くの観光客であふれ、喧騒さえ聞こえますが、この街の真骨頂は日が暮れ、夕焼けに灯火が重なる時から。今でも軒灯がともる茶屋から三味線や太鼓の音が頭の上からこぼれてきます。五木寛之著 「朱鷺の墓」 の舞台としても知られています。
この黄昏から日付が変る時間帯には、他では味あうことの出来ない幻想に浸ることが出来ます。忙しい昼だけではなく、ゆっくりと時間を掛けて体験されることをお勧めいたします。
ここ十月亭では、去年から一見さんからリピーターを重視した戦略に転換しています。
まずは一番大きかったのは、銭屋の本厨房でしっかりと銭屋のエキスを吸い取らせた若手調理師を送り込んだことでした。
もともと基本がしっかりと出来たところに、若手しかチャレンジ出来ない冒険心もプラスして、本店とはまた別の銭屋の料理が出来上がってきました。
観光客の方には東山の落ち着いた風情と共に、お昼のお手頃なランチを召し上がっていただいて金沢を体験してもらう。そして次回の金沢での夜の食事は 「今度は料亭に行ってみたい。」 と思ってもらう。夜は地元のお客様の普段使いのお店として、あるいは自分だけのゲストハウスとして利用されています。
いま茶屋街のある東山の地は、和・洋を問わず金沢の有名店が、若手料理人に集まり、切磋琢磨する場に変ろうとしています。「ひがし茶屋街」 という立地や建物に応じた料理を作り上げる十月亭の力量をご覧下さい。
10月31日 夜
十月亭
住所: 〒920-0831 石川県金沢市東山1−26−16
076-253-3321
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