Monthly Archives: 11月 2016

藁で焼くカッオ

季節を愛でる日本人の初物好き

かつおタタキは藁で焼くのが一番

江戸時代から垣間見える初物好き

(前回の社長ブログ 「ブームとブランドの違い」 の続きです)

 年の始の初競りにその年の最高値がでることは、ご祝儀としてよくあることです。しかし新年最初の市場の開業日に行われる「初競り」を「初物」と定義することは、ちょっと違っています。どちらも高値になるのですが、初物は辞書で引くと  「その季節に初めて収穫した野菜や果物、穀物、魚介類などを指す言葉」  とでてきます。

もともと日本の食文化は、季節を愛でて、季節をいただくことですので、いち早く季節を味わうことに大きな喜びを感じるのです。もう少し待てば盛りになり、味や値段も安定しますが、待つのは野暮。初物に手を出すのが粋の証とされました。その辺の話をもうすこし。

■ 初物好きの江戸っ子が始まりか!?

 江戸っ子は、初物が大好きで、「初物を食えば75日長生きする」 といわれ熱狂しました。その代表が 「鰹 (かつお)」 で、その理由は 「勝負にかつうお」 と通じるといわれています。 

その熱狂を抑えるため、江戸初期の4代将軍家綱のころより、鰹の売り出し時期は4月と定められていましが、熱狂は収まらず 「女房・娘を質に置いても」 といわれるほどでした。 

かつおたたき

かつおたたき

その年の一番の鰹が魚河岸に入荷すると、まず将軍に納められ、その後市中に出回りました。

「目に青葉  山ほととぎす  初かつお」  素堂

 江戸時代の文人・大田南畝は、文化9年3月25日に入荷された鰹を、高級料理屋の八百善が2両1分づつで3本買い、歌舞伎役者の3代目中村歌右衛門は1本3両で買ったと書いてあるそうです。

 最も高いのは、文政6年に、高級料理屋の八百善が4両で仕入れたのが最高値だそうです。 

当時、掛けそば1杯が16文しました。これで計算すると、物価の上下もあったろうけど、1両は7万円から20万円するということになります。1両を、仮に現在の10万円とすると、鰹が40万円ですから、いかに高かったかがわかると思います。(最近見た映画 「殿、利息でござる!」 では、1両が30万円になっていました。)

 初物好きは鰹だけでありません。初ナス・初きゅうり・初きのこと、なんでも 「初」 がつくものは大好き。その季節の初物を競って買っていました。

そのため物価が狂いまくることもしばしばあり、なんせ初物はめちゃくちゃ高いのに、2・3日我慢したらガクっと値段が下がっちゃうのにもかかわらず、粋な江戸っ子はそういった幕府からの規制を出されるとさらに初物熱がヒートアップしたようです。

そんな頃の話です。

■ 八百善 さんには「一両二分の茶漬け」の伝説があります。

 江戸末期の書物 「寛天見聞記」 に書かれています。八百善で (自宅でかんたんに食べられる) 茶漬けを出してくれ、と頼んだところ、半日あたりも待たされたそうです。ようやく出てきた茶漬けの味自体は良かったそうですが、帰るとき、「お代は一両二分 (現代なら12万円以上。もしかすると36万円?) 」 といわれてビックリ!

お茶漬け

お茶漬け

お茶漬け一杯で、ミシュラン三つ星の料亭なら芸妓さんを呼んで、そこそこのワイン飲めて散財できる金額です。お客はびっくり。当然、理由を尋ねました。

手軽に食べられるはずのお茶漬けだけど!?

お店側の説明では

「香の物は春には珍しい瓜と茄子を切り混ぜにしたもので、 (八百善が新島で促成栽培をしていたという記録があります)

 茶は玉露、米は越後の一粒選り、玉露に合わせる水はこの辺りのものはよくないので、

 早飛脚を仕立てて 玉川上水の取水口まで水を汲みに行かせました」

贅を尽くしたお茶漬けだからこそ高価だという説明に、 「さすが八百善」 客は納得してお金を払って帰ったとそうです。

一般的には、これを料理の作り手も数奇者、お客も数奇者ばかりで、八百善での一両二分の茶漬けは、いわば 「夢」 につけられたお値段というところでしょう。と説明が続きますが・・・・。

はたして、いま・・・・何人の人が納得してくれるのでしょうか。
熱い風呂に我慢して入るのが江戸っ子の粋とはいいますが、私には想像も付きません。でもそれを納得して何百年も美談として語り継がれてきているのが日本人の本質なのかもしれません。

 ちなみに「八百善」は、江戸元享保間創業で三百年以上にわたり、江戸料理の伝統を守り続けており、将軍も訪れたほどの店です。勝海舟も訪れています。また、開国を求めて来航したアメリカのペリー一行を幕府が饗応した時、料理を出したのが「八百善」でした。

寿し職人

ブームとブランドの違い

タグ付き活・ずわいがに

たまごっち と 初競りまぐろ

(前回の社長ブログ「ずわいかにの初物が130万円!」の続きです)

 今年は11月7日のズワイカニ漁の解禁初日に海があれ、高値を呼んでしまいました。しかしながら鳥取県の松葉ガニが去年より60万も高い130万円で入札されるなど、各県がタグを付けることによるブランド化戦略の結果ともいえますが、お客様に食べていただくために競り落とすのではなく、広告費の一環となっている現状はいかがなものなんでしょうか。

■社会現象となったたまごっちブームを覚えていますか?

 1996年11月23日にバンダイから発売された第1期たまごっちは、なにせ手に入りませんでした。入荷の情報を聞きつけた人々が徹夜で店に並ぶ様子が連日新聞やテレビで報道されました。持っていることがステータスとなり、忙しい人向けの 「たまごっち託児所」 なる預かり所まであらわれました。

50個のたまごっちの抽選販売に対して、抽選整理券が4000枚配られたり、ニッポン放送のラジオ番組のプレゼント告知に15万通の応募が殺到したり、ヤミで一個が数万円で取引され、手に入れるため売春行為まで行なう若者が現れるなど社会問題にまでなりました。

しかし、数か月後にはブームが沈静化。それまでに経験したことがない大ブームに大増産を行ったバンダイは、すぐに売り切れるはずが、あてが外れ、まったく売れず不良在庫の山を抱えてしまいました。在庫保管費などが経営を圧迫し、1999年3月にはメーカー在庫の250万個を処分しなければならなくなるほど経営が悪化してしまいました。ついにバンダイは不良在庫の処分により60億円の特別損失を計上し、最終的に45億円の大赤字となってしまいました。

 大ヒットしたにもかかわらず、一歩間違えば潰れてしまうかもしれない状況に陥ったのです。なぜ在庫の山になったのか、顧客は複数店舗に予約しており実際の需要は予約件数よりずっと少なかったのです。

需要と供給のバランスを見誤った究極の例と言えるでしょう。

どこか似ていると思いませんか。

■ マグロの初せりに勝ったのはだれでしょうか?

 2013年至上最高値の1億5540万円で落札したのは 「すしざんまい」 さんでしたが、これといつも競り合っていたライバルは、中国香港に本社をもつすしチェーン 「板前寿司」 を展開する株式会社 板前寿司ジャパンでした。単独あるいは高級すし店 「銀座久兵衛」 さんとの共同落札でした。

築地市場

築地市場

「板前寿司」 がマグロの初セリを最高値で競り落とすようになったのはなぜだったのでしょう。

 代表はリッキー・チェン氏。日本に魅せられたのは高校一年生のころ。同級生の父親が日本料理の調理師学校を創ったので興味を持ち、1986年、19歳で来日。寿司職人にあこがれ日本の寿司店で修行し、いつか世界中でリーズナブルな本格的寿司を食べてもらうという夢を持っていたそうです。

1989年、香港に戻り、日本への旅行ツアーガイドなどをして資金を貯め、1992年に日本風のクレープ屋チェーンを香港で展開して成功し、熊本のご当地ラーメンを香港でチェーン展開して成功。それを機に寿司ビジネスに参入するため、再び来日したのですが、封建的な 「河岸社会」 は外国人を受け入れてくれませんでした。ここまではよくある話です。

しかし、海産物ビジネスを手がける中村桂 氏(現板前寿司ジャパン社長)と出会い、水産業界とのパイプを確立。香港、やがて東京に 「板前寿司」 を開店します。しかし、「中国人が経営する寿司チェーン店」、「香港から逆輸入された寿し」 と風評が広がります。

大トロのにぎり

大トロのにぎり

 そこで、起死回生の策が、「初セリでのマグロ最高値競り落とし」だったのです。マスコミに取り上げてもらうことで、知名度が上がり、国産本マグロを使っていることも知ってもらえます。「板前寿司」 は一夜にして行列のできる人気店になったのです。

 至上最高値が出た後、「板前寿司ジャパン」が最高値狙いから手を引きました。中村桂社長は 「意地の張り合いになっていて、市場を混乱させた責任も感じていました。僕たちが引かないと終わらないと思った」という。「これでよかった。ホッとしてる」

「すしざんまい」の木村社長も 「妥当なかたちになってよかった」 と話していましたが、次元はそこではなく、そもそも 「板前寿司」 はマグロを競り落とすことではなく、他に狙いがあったということなのです。

日本中の市場関係者、飲食店がそれに乗ってしまいました。初競りの競い合いを楽しんでいた我々も、それを煽り立てたマスコミもやられてしまいました。お見事の一言ですね。

べにずわいがに

食材の旅・鳥取県の紅ズワイガニ

食材の旅・境港の夜明け編

日本一のカニの港

株式会社松本では、生産者や収穫者と直接コミュニケーションをとり、安心・安全で質の高い食材の確保を行っております。

~ 松本社長の食材の旅 ~

 シリーズの6回目は、冬の食材としてはずせない かに の物語です。

隠岐の島の ばい貝に続いての研修は、翌々日の10月20日早朝から鳥取県・境港での見学と、JFしまね 常務理事の 福本匡弥さんを交えたディスカッションです。

この市場は鳥取県にありながら、島根県の県都・松江市に近く、入船する船も島根県の船が多く、必然的に水揚げも島根県が多いため島根県が管轄している市場です。

 ■ 『スタバ』はないけれど『すなば』がある!!

 鳥取県のイメージを全国で調べても 「砂丘」、「二十世紀梨」、「カニ」、この3つがキーワードで、最近ではスターバックスがらみで 『スタバ』 はないけれど 『すなば』 がある!!が話題になったのが目新しい話ですね。

自撮り

自撮り

フェリーの到着した境港市といえば、漫画家・水木しげる氏のふるさとです。ここは、すっかり境港の顔になった 「水木しげるロード」 があり、漫画に登場する妖怪たちがブロンズ像になって出没し、若い女性たちの撮影スポットとなっています。

しかし私らフードビジネスにかかわる身にとっては境港といえば 「かに」ですよね。

■ 日本一の水産加工エリアが境港です

境港の平成 24 年の水産物取扱量は重量 114,258t(全国6位)、金額 16,262 百万円(全国 11 位)で全国でも有数な港です。

境港水揚げ推移

境港市場

境港市場

 そのなかでも紅ズワイガニとズワイガニを合わせた 「カニの水揚げ日本一」 を誇っており、全国の約半数の紅ズワイガニが境港で水揚げされ、紅ズワイガニの加工では全国の8割のシェアを持っています。

我々が訪れた時は、11月6日のズワイガニの解禁にはまだ早かったですが、紅ズワイはカニかご漁で行われていました。 

 紅ズワイカニは身は甘みがあり、水分の多いカニです。そのため保存中に水分が抜けて身が少なくなることを避けるため、甲羅を下にして漁場から港に運ばれてきます。

境港の紅ズワイガニはそのままボイルや冷凍されて出荷されるほか、加工用の原料として冷凍のカニクリームコロッケやカニちらし寿司などカニ肉を使用する食品の多くに、境港の紅ズワイガニが用いられ、その食品工場の数は日本一で、当社の取引先の工場もこの周辺にまとまってあります。 

セリの様子

セリの様子

 また、紅ずわいの加工だけではなく全国でも有数の水産加工地であり、原料供給から生産、流通までが一貫で行える設備があったこらこそ、ベニズワイガニの加工基地として発展していったようです。
そしてそれにより原料の需要が高まり、水揚高も増加したという相乗効果があったということは重要な点だと思われます。

 例えば、鳥取県以外で大量のイワシやサバが採れたとして、何百十トンもの魚を鮮度の落ちないよう加工する処理施設や食品工場は日本海側には境港しかなく、必然的に魚を満載にした船が境港を目指して集まってくるのです。

  かって、実は今でも、能登沖では 「夏まぐろ」 が大量にとれるため、これを石川県の名産にしたかった県の肝いりで、金沢中央市場に荷を入れさせましたが、内蔵抜きなどの処理が追い付かず、付加価値を上げるどころか、逆に下げてしまいました。 

いまでは能登沖や佐渡沖にとれた、一隻で何トンもの夏マグロを満載した船は日本海を縦断して、ここ境港まで何百キロも運ばれ、完璧な下処理をされ、 「境港・夏まぐろ」 として全国に出荷されています。

ここには腹を開くだけでも30人を超える職人やそれに倍する下処理をする人がいるのです。 

紅ズワイガニの山

紅ズワイガニの山

 明日未明にも石川の船がマグロを積んで入港してくると聞いた時には 「魚の場合は水揚げ港が原産地となってしまう」 のは分かりますが、それにしてもせっかくの 「能登まぐろ」 が 「鳥取まぐろ」 に変わってしまうのは、石川の人間としてはなんとももったいないことです。

■ 漁業の未来は地道な仕事にある

 さて、我々が訪れた時も、次から次へと満載のカニ漁船が接岸し、荷を下ろしていました。

 紅ずわい漁はかご漁で行われ、カゴはロープに50m間隔で150個が取り付けられ、海底に約2昼夜沈めてカニが入るのを待ちます。漁具の長さは、約1万mにもなり、これを9セットで使用します。

一カゴは30Kアップです

一カゴは30Kアップです

一カゴが30K入りで、一回に何トンもの水揚げがあるそうです。

写真のようにあまりに多いかごの量なので、大漁じゃないですかと問いかけても、

 ピークに比べて三・四割は水揚げが落ちているし、年々水揚げが落ちている。

今年は去年よりももっと悪い。単価が必然的に高いのは嬉しいけど、水揚げ量を自主規制しているからで、売り上げ全体としてははマイナスなんですよね。

それだけ資源が枯渇しているのですか?

・主漁場の大和やまと堆たいの周辺海域が暫定水域に含まれ、その前後から韓国漁船がどんどん入ってくるようになった。

・このため、トラブルが多発し、日本漁船は操業を断念に追い込まれるなど、締め出されてしまった。

・かつて、全体の9割を占めた同水域でのベニズワイガニの水揚げ量は今、3割に満たない。韓国漁船には実質的に操業規制がなく、その影響で資源が減っていることも大きい」

・しかも近くの某国は、こちらのかご網のズワイガニを漁具ごと奪っていく

・最悪、カニは我慢するとしても漁具までもっていかないで欲しいのが本音だ

・彼らは、それを再利用しているのだ。

・しかし、その漁具を利用しなければ生きていけない状況が分かるだけにあまりに切ない思いだ。

なんとも言葉にならない話が続きます。 

常務理事 福本 匡弥さんから説明を受けた

常務理事 福本 匡弥さんから説明を受けた

 しかし一杯二万円以上するズワイガニと比べて、30Kでその日の最高値が二万円と、安もの扱いされる紅ズワイも実は、高付加価値を持たすことは可能なんです。

  例えば、関西では京都の城崎温泉の近くの香住漁港でだけ水揚げされるベニズワイガニを、「香住ガニ」 と呼びブランド化されています。

そのキャッチコピーは、

「養分が豊富な海洋深層水で育った紅ズワイガニは、身が詰まり、甘味が強く、みずみずしい。」

「茹でガニだけでなく鍋、焼きガニ、カニ刺しなど、松葉ガニ同様さまざまな調理法で味わえます。」

 なぜブランドができるほど他との違いがあるのかは単純なことです。 

過去の中身が検品されます

過去の中身が検品されます

 境港の紅ずわいは五日間かけて漁がおこなわれます。当然ながら一日目の漁の紅ずわいと五日目の紅ずわいとは味もセリ値もまったく違います。 

五日目は生で販売するもの、一日目は加工用とにわかれます。その差は倍以上のセリ値がありました。

「香住ガニ」 の売りは、出航したその日に帰ってくる新鮮そのものだという事です。

あっという間に競られていきます

あっという間に競られていきます

単純だけど決定的な違いが、そこに生じるのです。

  4日目、5日目の漁の紅ズワイガニがないと加工業者は成り立っていけないのは確かですが、何とか住み分けて貴重な資源を大事にして欲しいものです。

また初セリという仕組みを使って値を上げるのではなく、付加価値を高めることによって自然に値が上がっていく。

それはお客様も納得し支持する価格であることが王道であり、関係者みなさんの幸せにつながっていくのではないかと思っているのです。

ずわいかにの初物が130万円!

ずわいかに解禁

ずわいかにの初物が130万円!

 冬の味覚を代表する日本海側のズワイガニ漁が11月6日、解禁となりました。

今年は初日に海が荒れ出漁しない船も多くありましたが、なんと初セリでは鳥取県の最高級ブランド松葉かにの 「五輝星 (いつきぼし) 」 が昨年を60万円上回る130万円、なんと一匹が130万円!でした。

( 福井の越前ガニ「極(きわみ)」も昨年の3倍以上の価格となる37万円という高値でした )

大きく値を上げた背景には、カニに付けたタグによるトップブランド化の定着が進んだことがありそうです。

 通常であれば、仕入れたものは自社の利益を上乗せして販売されます。

ですが、ニュースに出るような 「ご祝儀相場」 の値段は、普通の取引価格をかなり上回っていることは間違いありません。原価で足一本が25万円以上!するものを食事として食べる人がいるのかです。
いえ、いえ、食べるために買う人ではありません。

■ 2013年マグロの初せりでは1億5540万円

 初セリと言えば、年明けのマグロの初セリでは、マグロが1千万円を超える値段で競り落とされる、というニュースが毎年恒例となっています。

至上最高値は 「すしさんまい」 さんがせり落とした2013年の222kgで1億5540万円です。

築地場内

築地場内

マグロは約6割が食べられるそうなので、200キロのうち約120キロが食べられますから、すし一貫に使うマグロは約15g程度らしいので120キロで計算すると約8000貫です。

そうすると一貫あたり、なんと17500円となります!!(しかも原価で)

売価に直すと、トロなら1カン当たりが4万~5万円以上になるそうです。
・・・・少なくとも回転寿司で出せるような値段ではないはずです。

それを、通常価格の中トロが298円、大トロは398円で提供されていました。消費者にとってはとってもお得で嬉しいことかもしれません。マスコミもまるで正義の味方のように褒め称えます。でも少し考えてほしいのです。

 仕入値よりも低い金額での販売となれば、当然損失が出てしまいます。

なぜ、ご祝儀相場を作る会社は、損失を出してまで高い金額でカニやマグロを競り落とすのでしょうか?

マグロの解体

マグロの解体

一番の要因と思われるのは、広告宣伝効果です。

1匹130万円するズワイガニの価値も広告宣伝効果にあるのです!

 初セリでの高額落札は、テレビ、新聞、最近ではネットニュースなどで取り扱ってくれる可能性が高いリソースです。

 そうすると、わざわざ広告費用を出さなくても、自社の名前を大々的に取り扱ってくれるのですから、周知効果はかなり大きく期待できます。

また、それにより集客が高まると、それ以外の商品販売も見込めるため、そちらの利益で高額落札分の損失をカバーできることになります。

つまり広告料に換算すると、

「新聞は約7800万円。テレビは21億4000万円になりました。もしすべての番組を入れれば、軽く35億円は越えるはずです。さらにインターネットやラジオ、雑誌を加えれば、およそ40億円というところでしょう」(広告代理店社員) (週刊FLASH 1月29日号より)

実際に松葉ガニを競り落とした業者は 「少しでもPRできれば」 と話していたとのことです。

新しいブランド名や鳥取県の名前を広めたい、という思いで高額での落札となったのでしょう。

■ 祭りと見るか、流通をゆがめる弊害と見るかです。

 確かにご祝儀相場は二三日もすれば平常に戻っていくのですが・・・・・

 一般にはあまり知られていませんが、 「卸売市場法」 という、取引ルールを定め、商品を広く円滑に流通させることを目的に制定されている法律があります。法律の趣旨からして、あのような市場を歪める異常な値は認められるべきではないと私は考えます。

確かに誰も損はしていないわけです。落札した人も、競り合って逃した人も、ある一定の宣伝効果があり、末端の食べる人も通常価格で販売されるわけですから誰もマイナスはないように見えます。

しかし、それに引きづられて他のマグロもカニも二・三日は値が高くなる可能性があり、それが二三日で元に戻るという保障はありません。もしそうなった時、その責任は誰が取ってくれるのでしょうか?

マグロの寿司は美味しいけれど・・・

マグロの寿司は美味しいけれど・・・

卸売業者によりますと、その日、築地市場で取り引きされたマグロは、生鮮と冷凍を合わせておよそ2400本に上りますが、5日、最高値となった1本1億5000万円余りという価格は、ほかのマグロをほとんど買い占められる額だということです。こうした価格の高騰について、市場関係者からは 「異常な事態だ」 という声も出ています。

 マグロは国内だけでなく世界から入ってきていて、市場関係者からは、初せりの価格の高騰で海外の取り引き先から日本では高値がつくという認識を持たれて価格がつり上げられ、結果として消費者が購入する価格にもはね返るおそれがあるとして、影響を懸念するのです。

確かに価格は需要と供給の関係ですから、需要がなければ値が下がるわけですから、初値はお祭り価格だから特別で、年間を通してなら正常といい繕うことは出来ますが・・・。でも、もしそれが日常になった時・・・。

■ 一房110万円のぶどう

 今年の夏 (2016-07-07)、石川県が開発した高級ぶどう 「ルビーロマン」 の初競りが7日、金沢市中央卸売市場 (金沢市西念4丁目) でありました。最高で1房110万円の高値がつき、昨年記録した1房100万円を更新しました。

このルビーロマンには30粒余りの実がついていて、1粒当たりにするとおよそ3万5000円になります。たった一粒がが35,000円です!

官民揚げてこの快挙 (?)に浮かれていますが、私は疑問に感じます。

 なぜなら極論をいうならば、買い手と売り手が共謀すれば、一年の相場が作れるのです。あるいはマスコミが作れるともいえるのではないでしょうか。

意識してそこに 「宣伝になるよ」 との言葉を掛けて、あるいは自ら話題を作っていくのは、漁業者や生産者に応えることはできても、その視線は消費者にはなく、単なる話題作りですから、いずれは自らの首を絞めることにはならないでしょうか。

そしてなにより一般大衆の幸福を目的にしたこの法律 「卸売市場法」 の趣旨に沿うのかどうか疑問です。

 金沢では新幹線が開業して、多くの地元の特産品、大きな目で見れば日本海側の独自の物産に注目が集まっています。

しかしながら工業製品なら需要が増えたからと工場を増やしたり、農業なら農地を増やしたりして供給を増やすことはできますが、海産物は増やすことができず ( むしろ水揚げは年々右肩下がりです) 、バブル期のように取り合いがすでに始まっています。

■ めくら買いの「のどぐろ」。あなたの目は開いてますか?

 例えば、人気の 「のどくろ」 は新幹線開業二年前までは、ウイークーディなら卸値でキロが2000円後半~3000円後半だったものが、今では韓国や中国から例年以上に入荷しているのにもかかわらず、同等品が8000~10000円、週末には12000円超えも珍しくはありません。

一般に生鮮食料品は供給が三割下がると売値は倍になるといいますが、たしかに 「のどくろ」 がブームとなり観光客は猫も杓子も 「のどくろ」 「のどくろ」 ですが、供給は落ちず、増えているのにもかかわらず卸値が3倍以上になっています。

のどぐろが高すぎる!

のどぐろが高すぎる!

 それではのどぐろを食べるような客層 (需要) が三割以上増えたかといえば、そこまでは増えてはいない。もともと客単価が2000円、3000円程度の夕食では、のどぐろを付けるのは原価からいって難しく、他の魚だったわけです。それをお客さんの要望だからといって無理をして、小さくても付けてしまう。
その次に来るのは、韓国産でも中国産でもなんでもOK。
「へぇ~、これがのどぐろ!高級魚なのよ~」 食べたという体験だけで喜ぶ観光客が目の前にあります。

でも日常に戻り、振り返った時、また金沢に食べに来たいと思うでしょうか?
それは次につながるのでしょうか?

 小さくても高いんですよ。との飲食店の声。お客様のたっての希望ですから。
単なる自己満足に過ぎません。口の肥えたお客様はがっかりです。良心的な飲食店は儲かっていません。

無理して提供するより、レベルの落ちたものを提供するくらいならもっともっとおいしい魚があるはずです。もっとお客様に満足してもらえる魚があります。あなた方が無理して買うおかげで、需給の関係以上に小の値が上がれば大も上がる。まわりまわって自分で自分の首をしめていてるのが現状です。

むかしむかし、数の子がない!ない!と演出して、商社一丸となって売り惜しみをし、値段を何倍にも釣り上げたことがありましたが、まさか今回はそれはないと思いますが。だからこそ、

 もっと工夫しなさいと言いたい。確かにお客さまは 「のどぐろ」 を食べたかったかもしれません。
でも本当の本意は、金沢でなければ食べられない美味しい物が欲しかったはずです。目の前に現れた要望ではなく、真の心を。お客様の 「そうそう、こんなのが食べたかったんだ!」 との内なる声なき声をかなえてあげる事こそ、真のおもてなしだと私は思うのです。