食材の旅 厳しい自然が育てる岩のり 

松本社長の開発ストーリー 岩海苔編

岩のりは、冬の食卓に欠かせない、奥能登 ・ 母親の味です。

株式会社松本では、生産者や収穫者と直接コミュニケーションをとり、安心・安全で質の高い食材の確保を行っております。

~ 松本社長の食材の旅 ~

シリーズの3回目は、奥能登の荒海で育った天然の味を求める物語です。

岩海苔採りのお母さんと

岩海苔採りのお母さんと

 今回は奥能登、珠洲が舞台。石川県でも最北端です。岩のり収穫をお願いしているお母さんを訪ねました。

岩のり採り

岩のり採り

現場は冬の日本海。ザッバ~ンという荒波のイメージそのものの海岸です。
岩に砕けた波に空気が混ざり石鹸の泡のような水泡となり、空中に雪のように舞って  「波の花」 となって海岸一帯をおおいつくします。海が汚染されていると、波の花は出来ませんので、波の花は海がきれいな証拠なのです。

岩のり採りは命がけの仕事です

 そしてシベリアから吹きおろす強烈な風が吹き荒れ、波が砕け、波の花が舞う岩場では、自然に岩々の表面にぬるぬるとした海苔が生えてきます。これが 「岩のり」 で、寿しで使う 干した海苔 とは違って、潮で湿り、ボタボタの状態になっているので輪島では 「ボタノリ」 とも言われます。

送られてくる岩のり

送られてくる岩のり

収穫は 「命がけ」 という言葉そのものです。命綱も着けずに波打ち際の岩に登り、岩に張り付いた海苔を採っていきます。冬の日本海は、シベリアから吹き下ろす冷たい風で海は荒れ、雷鳴は鳴り、大雪が降り、晴れの日はごくわずかです。

そのほんのわずかな日で波の静かな時のみ収穫が可能となります。それでも予想外の高い波で海水をかぶったり、最悪の場合は波にさらわれたりして不幸な事故があとを絶ちません。また嵐がやってくれば、それまでやっと育った岩ノリを波が根こそぎさらっていきます。

神馬草の生

ギバサ(神馬草)の生

冷たい荒波が岩ノリを産み育てるのですが、それが強すぎればすべてがゼロに戻るのです。そのため月のうち一回も収穫が出来ないことも何度もあるのです。いかに貴重な食材であるということが理解いただけるでしょうか。

その過酷な現場ゆえに、また能登自体の過疎化・高齢化も進み、続けていく人がどんどん減っているという状況です。

神馬草をボイルすると真ッ青に

ギバサ(神馬草)をボイルすると真ッ青に

 私どもの店も2000年からこの珠洲の天然・岩のりを扱うようになりましたが、そのお母さんもいまや80才を過ぎ、年を重ねるごとに岩のりを摘みに出る機会も減っていきました。こちらも無理にお願いをして、もし万一の事があれば責任を取れませんので、ご本人とご家族にご相談をさせていただき、今の若い(?)お母さんを紹介していただきました。おかげさまでいまは、なんとかに入荷できるようになりました。

採れたて かじめ

採れたて かじめ

 能登の岩のりは日本海の荒波で育つため、しっかりとした磯の香りがあり、栄養価も高いと言われています。しかもコンクリートで作られた岩のり畑ではなく、ゴツゴツとした本物の岩礁で収穫された岩のりは一段と味も香りも高いと評価されています。

当社のお客様には常に少しでもよい商品を提供するように心がけ、かつ収穫される方をバックアップするためにも、高級食材として評価していただける所に販売することにより、生産者の方の努力が正当な評価を受けられるようにするのも私たち株式会社松本の役割です。

 おもに岩のりは、料理屋さんでは吸い物の椀種として使われ、お椀のフタを開けた時に一気に磯の香りが広がり食欲を刺激します。また刺身のあしらいや酢の物として使われますが変ったところでは小鍋にて 「岩のり鍋」 としても提供されます。

カジメをボイルしました

カジメをボイルしました

水で戻すと大きく増えますが、養殖や人工の岩礁で作るものと違い、自然の岩に付着するものですので砂がかむことがありますので丁寧な水洗いが必要です。

能登のソウルフードは、海の恵み・海藻です

 また寒波が過ぎ、岩のり採りが終われば、今度は 「 はばのり 」 「 ぎばさ (神馬草)」 「 あおさのり 」「 かじめ 」などの海藻 ・ 海の幸がいただけるのです。
海と暮らす能登の人々は、昔から一年中海藻を食べる習慣があり、旬 の時期は生で食べ、それ以外は乾燥させて保存食にました。

ねぶた温泉 海游 能登の庄

ねぶた温泉 海游 能登の庄

昔は割った竹に味噌で味付けした ギバサ をぐるぐると巻きつけ囲炉裏端で焼いた 「くしめ」 という料理が一般的だったそうで、遠赤外線で外はパリッと中はふっくらと焼け、磯の風味が増してそれはそれはおいしかったそうです。

 輪島のねぶた温泉 「能登の庄」 の調理長は、30年来の古い付き合いの 林 彦義 さんで春先に、ここにランチを食べに行ったところ、大き目の松葉串に岩のり、ギバサ、刻んだカジメをぐるぐると巻き付け、小鍋仕立てにしてある海草しゃぶしゃぶをいただきました。

調理長・林 彦義

調理長・林 彦義

出し汁にいれるとサッと真っ青に色が変わり、磯の香りがして、とても趣のある良い料理でした。

 金沢市の柿木畠にある蕎麦屋、 「 更科・藤井 」 さんも岩海苔を提供しているお店の一つです。麻布の 「 更科堀井 」 で修行を積まれたご主人による、金沢では珍しい江戸前蕎麦を提供するお店です。

藤井のカウンター

藤井のカウンター

ここでは、蕎麦をはじめ一品料理などに 岩のり が使われております。海苔そのものは脇役的な存在ですが、すべての食材にこだわっている顕れですね。

 このほか乾燥して浅草のりの状態にした 「 はばのり 」 や、ナマコの卵巣を干して作る 「 くちこ 」 も提供させていただいております。

藤井のそば切り

藤井のそば切り

 私たちは本当の美味しさを求めて、そして安全で安心な食材を求めて、今日も産地へ向かいます。この季節だけの旬の食材を求めて・・・。

手打そば 更級藤井(さらしなふじい)
【住 所】 石川県金沢市柿木畠3-3
【電 話】 076-265-6870